ほくちに住むさまざまな人を取り上げるブログシリーズ「ほくちの人」。第1回でお話をうかがったのは、千提寺に住む百合さん(4人家族)です。
夫婦で営むM’scafeを中心としたほくちでのやりたいことを実現する暮らしや、一度は就職で家を出た長女・長男がほくちへ戻って理由、芸術への想いなどを4人それぞれにインタビューしました。
プロフィール
茨木市千提寺の住人。2005年にM’scafeをオープン。M’scafeはコンセプトから設計、内装まで全てを百合ファミリーが創り上げている。これまで設計士のふつみさんが描く設計図を、内装業を生業にしてきた寛さんが形にしてきたが、2015年からは独立して地域を出ていた、こどもたちも空間創りに加わり、カフェをリニューアルオープンさせた。天気の良い週末に営業している。
ここは最高の遊び場|ふつみ(母)
お嫁に来た時、空気がよくて、開放感があって、火をくべても誰からも何も言われない自由があって、何て素敵な場所なんだろうと思った。彼が古い小屋を建て直し、遊び場にしていた。
私たちはその秘密基地で暮らし始めたのだけど、2人で好きな空間に創り上げていくことが楽しかった。子どもたちが生まれて、成長して、独立してもずっとそれは変わらなくて、空間創りは私たちのライフワークだった。
M’scafeをオープンするきっかけは、リサイクルセンターでたくさんの椅子を見つけたこと。
この古い椅子にペンキを塗ったらきっと素敵になると思った。そして、タダでもらってきた椅子たちなんだよ、って誰かに見てもらいたくなった。
そんなことを考えていたら、お料理が上手なお義母さんのご飯を食べてもらいたいなぁ、私たちが創ってきた好きな空間でパーティがしてみたいなぁと、どんどん「やりたいこと」が浮かんできて、M’scafeが形になっていった。
ずっとここは私たちにとって最高の遊び場だった。自分たちで創りあげたこの場所から見る景色が一番好きだなぁとしみじみ思う。これからもこうやって暮らしていきたい。
ここをアートセンターにしたい|真梨奈(長女)
私はずっと好きな時に家に帰れない環境が嫌だった。親に頼まないと家に帰ることも、家を出ることもできない。
だから、高3から独り暮らしをして、ここに戻ろうなんて考えたこともなかった。好きなダンスを極めたくて、ニューヨークで暮らし、写真を始めた。色んなジャンルのアーティストとの交流を通じて、芸術の分野で生きていきたいと思うようになった。
昨年、またニューヨークに戻るつもりで一時帰国した。すぐに戻るつもりでいたから実家に間借りして暮らしていたのだけど、改めてここを見た時、どんどんイマジネーションが広がっていく感覚をもった。
「ここをアートセンターにしたい。」
いつしか両親が創り上げてきたこの空間に自分の想いを重ねるようになった。アーティストに家を貸し出し、制作の場にしてもらうことで、日本の芸術の発展に貢献したい。自然豊かな環境に屋外ステージを造って、発表の場にするのもいい。
ここにいると、やりたいことがどんどん溢れてくる。家族で考えていることを1つずつ形にしていくことが楽しい。自分の好きなことをして生きていく「選択」ができることを幸せに思う。
芸術で生きていきたい|優隆(長男)
大学を卒業して、美術の先生になった。毎日充実していたけれど、ずっとこうやって生きていくのか自問自答した時、違うと思った。やっぱり自分を表現していく芸術を頑張りたいと思った。
そんな時に、両親が亡くなった祖母が住んでいた古民家を再生し始めた。古い内装を潰し、夏にドラム缶で廃材を燃やし、重たい石を父と二人で動かした。大変だったけれど、家族で1つの作品を創り上げていく過程は楽しかった。
やっぱり自分は芸術で生きていきたいのだと思った。
今は芸術に軸足を置くことができる生活をしている。いつかは芸術一本で暮らしていけるようになりたい。
そして、自分がそうだったように、M’scafeを自分のやりたいことを後押しする場所にしたい。カフェには若き芸術家が作品を発信するギャラリースペースをつくった。
ここにいると、人は楽に生きられるのだと思う。自分のやりたいことをして生きていけばいいのだと。苦労も楽しみになるのだと教えてくれたこの場所に、恩返しできるように日々を過ごしていきたい。
想いを形にしていくのが僕の役割|寛(父)
都会で仕事をして、帰ってきたらまったく別世界。刺激も癒しも両方を得られたことはラッキーだった思う。
そして、自分の自由にできる場所がある。全然退屈しない毎日だった。やりたいことがどんどん出てくる。こどもたちの想いも加わった、妻が描いた設計図を、どんな風に形にしていこうか考えるのが面白い。
想っていることは必ず実現していく。
家族から地域に想いの輪が広がり、今色んなことが動き始めている。1つずつ形にしていくつもり。想いを形にしていくのが僕の役割。
独身時代からここで遊んでいたら、ふつみが加わり、子どもたちが加わり、地域の仲間が加わり、遊びの輪がどんどん広がってきた。
人生は遊びだと思う。楽しくなくちゃ意味がない。ここは遊ぶにはもってこいの場所。これからも思いっきり楽しんでやろうと思う。
インタビューを振り返って
会社で仕事をして、家に帰って家事をして、週末は疲れてゆっくりする。こういった生活をしている人の中で、「やりたいこと」を形にできる人はいったいどれだけいるのでしょうか?
今回お話を伺った、百合家の4人はみんなが「やりたいこと」に向けてエネルギーを注いでいます。夫婦で作った設計図と形にしていくなかで、芸術の分野で生きていくと決めた2人の子供家に戻ってくると、家族4人での作品作りはさらに加速しました。
きっとこれからも、百合さん一家は、この遊ぶにはもってこいの場所で、思いっきり楽しみながら家族がやりたいことを実現していくのだなぁと思いました。